記事№8 ドライマウスが増えている!?
今月のトピックスではこのテーマについて取り上げてみました。
長期にわたって次のような症状が続く時はドライマウスの可能性があります。
いつも口の中がねばつく感じがある。のどが常にかわいている、会話をしていると声がかすれ
る。あなたは大丈夫ですか?
ドライマウスとは?
ドライマウスは、目がかわくドライアイと同様に口の中がかわく状態を指し、正式名称は「口腔
乾燥症」といいます。現在患者数は800万人とも推定され、予備軍も3,000万人といわれる現
代病の一つと考えられています。口の中がかわく原因は唾液の分泌低下によるものです。患
者は年々増え続けており、患者の大半は女性で主に50歳以上ですが、30-40代にも多く見
られます。
普通、健康な人が分泌する唾液の量は1日約1.5リットルですが、患者の中にはその1/10の
150ミリリットルしか分泌されない方もいます。では、水分を補給してかわきを防げば?と思うで
しょうが、ドライマウスに水分補給は有効なれど、あくまでも水は水であって唾液の代わりはつ
とまらないのです。
唾液の役割
唾液には、ラクトフェリン、リゾチーム、ラクトペルオキシダーゼ、免疫グロブリンといった抗菌物
質が含まれており、これらが口の中の常在菌やカンジダ菌の増殖を抑え、風邪などの感染症
から守ったり、また、唾液の中に含まれるムチンは粘膜を保護し、ウィルスが体内に侵入するの
をブロックするという働きもあります。その他虫歯菌や、歯周病菌の増殖を抑えたり、人体にダ
メージを与えるフリーラジカルを分解、除去して老化を防ぐ働きもあります。
すなわち、唾液というのは健康を維持するために必要不可欠なものであり、この唾液の分泌
量が極端に少ないドライマウスは、体に様々なダメージを与える危険性があることになります。
ドライマウスを放置しておくと、虫歯や歯周病、口内炎、口臭、味覚障害といった口に関するト
ラブルのみならず、咽頭炎や食道炎、萎縮性胃炎といった全身に関わる病気を招くこともあり、
しゃべりにくい、食事がしにくいといった支障も出てきます。
ドライマウスの原因
ドライマウスの原因としては、ストレスや食事の内容と口腔周囲筋力の低下などがあげられま
す。ストレスについては、人はリラックスしていると副交感神経が優位になって唾液も出やすく
なりますが、緊張すると逆に交感神経が優位になり唾液が出にくくなります。この緊張時のス
トレスが慢性的に続けば、ドライマウスも慢性化してしまいます。
食事内容に関しては、唾液は噛む刺激が脳に伝わることでも分泌されます。しかし、最近は
食生活の変化で噛まなくても食べられる柔らかい食べ物が多くなってきました。咀嚼する回数
が減れば、それだけ唾液が出にくくなります。また、年を取ると唾液に限らず体内の水分が減り
ますが、それとともに噛むための口の周りの筋力も衰えることでドライマウスになる場合もあり
ます。
その他、原因として糖尿病やシェーグレン症候群という自己免疫疾患、がん治療における放
射線障害、脳血管障害の麻痺、薬の副作用が原因とされる場合もありますので、ドライマウス
を自覚されたら、早めにかかりつけの歯科医師に相談してください。歯科医院で検査ができ
ない場合には、大きな病院の専門科を紹介してもらい、そこで詳しい検査を受けましょう。
ドライマウス解消法(自分でできること)
原因がハッキリしたら、あとはその原因を取り除くようにするのが基本です。たとえば、ストレ
スが原因ならストレスの元となるものを取り除くのが一番ですが、適度な運動をするのも有効で
す。口の周りの筋力低下にはお口の体操などのフェイシャルトレーニングが効果あります。ま
た、食事はよく噛んで食べること、噛みごたえのある食べ物を選んだり、酸味のあるものを食べ
て脳に刺激を与えるのも有効です。また、ストレスや他の薬の服用で失われがちがちな亜鉛
を補うために、のりやひじきなどの食物を積極的に取るのもよいでしょう。
日常生活の上での注意点として、1つめは口の中を常に潤すこと。まめに水分補給をして、か
わきすぎないようにすること。水分補給もジュースなど糖分の入ったものより、水の方がよいで
しょう。ドライマウス用の保湿ジェルや人工唾液もあるので活用してください。2つめは、部屋の
湿度です。室内が乾燥しすぎないよう加湿器の利用も有効です。3つめは、お口の中を清潔
に保つこと。唾液の量が少ないと自浄作用が下がって、口の中が不潔になりがちになるので、
歯磨きやうがいを頻繁に行うことは有効です。また、タバコは血管が収縮して唾液分泌を少なく
しますし、お酒は飲み過ぎるとアルコールの利尿作用で脱水状態になり、当然唾液分泌が少な
くなりますので要注意です。
ドライマウスの診断と治療(専門家による)
ドライマウスを疑う場合には、アンケートによる自覚症状のチェックと口の中の観察、ガムテス
ト(ガムを10分間咬んで出てきた唾液の量を測定する)による唾液量の測定を行ないます。自
覚症状や口の中に症状があって、ガムテストが10ml以下であればドライマウスと診断します。
次に“唾液が作れなくなった人”なのか“水分が減った人”なのかを診断します。そのためにま
ず、唾液を作る能力が正常かどうかを唾液腺機能シンチグラムという検査を行い調べます。こ
の結果により機能が正常であれば“水分が減った人”、機能が低下していれば“唾液が作れな
くなった人”ということになります。これまでの診査で原因として該当しそうな病気などがない場
合にはシェーグレン症候群によるドライマウスを疑います。シェーグレン症候群の診断には特殊
な検査が必要になります。その際には眼科や内科の先生と協力して行うことになります。
ドライマウスの原因を調べることが治療法を決める上で最も重要なポイントです。糖尿病や唾
液腺自身の病気があり、原因が明らかな場合には、その治療を最優先に行ないます。薬の副
作用が疑われる場合には、その薬の中止や変更について他科の先生と相談することになりま
す。ただし、自己判断で勝手に薬を中止しないようにして下さい。
ストレスが原因と思われる場合には生活習慣を改めてもらったりもします。また、口を開けて
寝ている方には夜寝る際にマスクを使ってもらったりします。マスクはユニチャーム製の超立体
マスク(R)がお勧めのようです。口と鼻の両方を覆うことができて、さらに息苦しさがありません。
90%以上の方が従来使っていたガーゼタイプのマスクより使いごちがよいと答えています。
しかし、シェーグレン症候群を始めとする自己免疫疾患や腫瘍、放射線治療や透析などが原
因の場合は根本的な治療が大変難しいです。そのため、症状をやわらげる治療が中心になり
ます。人工唾液やうがい薬、トローチなどが用いられます。
いかがでしたか?あなたや、あなたの家族もドライマウスにならないよう毎日しっかり唾液を
分泌させる生活を送るように心がけましょう。